白内障の点眼治療
白内障で低下した視力を元に戻す薬は現在のところありません。ただし、予防効果を持っている薬があり、厚生労働省に認可され、医師による処方が受けられる薬があります。
主に使われているのは、ピレノキシンまたはグルタチオンという点眼薬です。
点眼開始時期、投与開始年齢など、効果が期待できる条件がありますので、必ず医師の処方を受けて、指示に従って点眼してください。
点眼液とその期待できる効果
ピレノキシン(カタリンR,カリーユニR)
白内障を起こすとされているキノイド物質が水溶性タンパクと結合しないよう、競合的に阻害することで進行防止の効果が期待できます。
グルタチオン(タチオンR)
抗酸化作用を持つ点眼薬です。タンパク質の酸化を防ぐことで、白内障の症状進行抑制効果が期待できます。
白内障の点眼薬の効果について
ピレノキシン(カタリンR)点眼液は、2004年にポーランドと金沢医科大学との共同研究で「程度の軽い皮質型の白内障に使用した場合に、白内障の進行を遅らせる効果があった」と報告されています。
混濁面積20%以下という初期の皮質白内障を持つ59歳以下の群に対しピレノキシン点眼治療を行った時、投与後18ヶ月目に白内障進行の抑制効果がみられたという結果です。ただし、核白内障、後嚢下白内障、混濁面積が20%よりも大きい皮質白内障、60歳以上の白内障群では進行抑制効果が確認できませんでした。そのため、年齢や白内障の進行程度によっては抑制効果が得られない場合もあります。
点眼治療のまとめ
白内障の点眼治療の目的は、症状の進行を遅らせることが目的となり、症状が改善することはありません。
また、薬の効果は個人差があり、点眼治療を行っていても病状が進行する場合もあり、経過観察が必要となります。白内障を完治させるには、手術を行うしか方法はありません。
手術のタイミングについて
白内障の手術は、患者さんの日常生活に支障が無ければ緊急を要するものではありません。ただ、手術を遅らせたことで、思わぬところで交通事故の原因になったり、他の人を巻き込むトラブルになる可能性があります。
また現在、白内障手術の主流となっている超音波乳化吸引術を実施する際は、水晶体が軟らかい段階で早期手術を実施することで、合併症の危険性もさらに低くなり、手術後の乱視も少なく済むメリットがあります。
逆に手術を先送りにすることで、他の眼の疾患の併発、水晶体が硬くなり手術が難しくなるなどのディメリットもあります。
当院では、患者さんに合わせた手術時期の相談にのっています。