レーザー光凝固術とは
レーザー光凝固術とは、網膜をはじめとする眼底(眼球の奥)の病変部にレーザー光線を照射して焼き固めることによって、病気の進行を阻止するために行われる治療法です。
この治療法で視力を改善することはできませんが、今現在の視力をほぼ維持しながら病気がそれ以上悪化することを予防するという意味では、特に網膜に発生するさまざまな病気に対して非常に有効とされています。
当院のレーザー光凝固術の特徴
当院が網膜・黄斑疾患のレーザー光凝固術を実施するために導入しているPLEX Elite9000とNavilasレーザーを使用することで、より高精度で患者さんに負担の少ない治療が可能です。
PLEX Elite9000
検査時に造影剤を使わずに網膜の血管と断層像を従来の機器よりも広範囲に撮影できる最新OCTとなります。網膜・黄斑疾患の眼底血管の異常に伴う病気を診断するのに有効です。世界で200台、日本では20台しか導入されていない最新高精度の検査機器です。
Navilas® 577+
Navilasレーザーは、従来の機器よりも正確な治療計画と患者さんの負担を軽減することができる網膜光凝固術を行う最新レーザー機器です。
特徴としては、
1.カラー眼底画像にElite9000と蛍光眼底造影の画像を取り込み、事前にレーザー治療計画を作成できます。
2.事前の治療計画と優れたアイトラッキング機能によってレーザー照射を行うので、高精度かつ安全性に優れた治療が可能です。
3.従来のレーザー機器よりも迅速かつ効果的な治療が可能です。
局所光凝固術
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デジタル眼底画像
高解像度のカラー眼底画像はNavilas®のボタン操作で取得できます。 -
ターゲットアシストレーザー
事前にプランニングされた治療計画は眼底画像にオーバーレイされ、エイミングビームを治療箇所に配置します。 -
デジタル治療計画
外部診断画像のオートインポート機能により、治療箇所に対する正確な位置付けに基づいた治療が可能となります。
汎網膜光凝固術
汎網膜光凝固術とは、網膜を広範囲に光凝固術することです。通常は、網膜を一度に広範囲凝固すると刺激が強いために数回に分けて光凝固術を行いますが、Navilasレーザーでは、1度のレーザー照射でも刺激が少なく、短時間で治療を実施することができるので痛みが少なく、患者さんの通院負担が軽減します。
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広角視野による光凝固術
Navilas®のワイドフィールドオプティックスは、従来のスリットランプを用いた装置とは別次元の広角な視野を提供するため、 治療部位を容易に確認し治療することが可能です。 -
高速パターン光凝固術
最大25個のスポットを有するパターンをタッチスクリーンまたはジョイス ティックを用いて凝固箇所に直接位置づけし、迅速に照射することができます。またエイミングビームは自動的に次の照射位置を示します。 -
デジタル治療計画
外部診断画像のオートインポート機能により、治療箇所に対する正確な位置付けに基づいた治療が可能となります。
閾値下(いきちか)光凝固術
閾値とは、治療を行うために必要な最小限の強度や刺激などの量という意味で、閾値下光凝固術とは、網膜組織に対して凝固閾値(ぎょうこいきち)に達することなく繰り返し加熱・刺激が可能なレーザー光凝固術で、視機能を維持しつつ瘢痕を回避する事ができる治療となります。
Navilasレーザー治療例
①検査
PLEX Elite 9000で撮影した眼底の血管造影とVISUCAM NM・FAによる蛍光眼底造影写真を撮ります。
毛細血管が確認できない箇所、血管が詰まっている箇所を確認(赤丸参照)
②治療計画を作成・レーザー照射
①の赤丸をもとにレーザー治療計画を作成します。図の黄色いマークは、黄斑部と視神経です。黄斑部の周辺までレーザー光凝固術が可能になった事を見ていただけると思います。
③治療レポート
薄い水色の丸が、
【治療レポートの参考例】
レーザー光凝固術を対応疾患
レーザー光凝固術は主に以下のような病気に適応となります。
加齢黄斑変性症
加齢黄斑変性はその名前が示すように加齢が主な原因とされていますが、太陽光や高血圧、肥満、偏った食事、遺伝などの関与も指摘されており、喫煙者の発症頻度が高いこともわかっています。日本では比較的患者数が少なかったのですが、近年になって増加傾向にあり、特に滲出型が増えています。欧米での中途失明率では加齢黄斑変性が1位ですので、生活様式の欧米化も増加の要因になっていると思われます。組織にもダメージを与える危険性があるため、中心窩以外の治療でレーザー光凝固術が用いられます。
糖尿病網膜症
糖尿病による高血糖の影響で網膜の血流が悪化する病気です。血流の悪化によって、網膜上に発生した酸素や栄養を補給できない部分を放置すると、硝子体(しょうしたい)出血や網膜剥離といった深刻な合併症を引き起こす元になる異常な新生血管が生じ始めます。そこで網膜上の酸素や栄養が不足している部分をレーザー光線で焼き固めて、新生血管の発生を予防します。
網膜静脈閉塞症
高血圧や動脈硬化などの影響で網膜上の静脈が詰まって閉塞した状態になる病気です。静脈が閉塞した状態を放置すると、視力の保持において最も重要な組織である黄斑部に浮腫(むくみ)が生じたり、硝子体出血や網膜剥離といった深刻な合併症を引き起こす元になる異常な新生血管が生じ始めます。そこでそれぞれの病変部をレーザー光線で焼き固めて、浮腫を改善したり新生血管の発生を予防します。
網膜裂孔
網膜に裂け目や孔(あな)が生じる病気です。この裂孔から硝子体の水分が侵入することによって、網膜が眼底から浮き上がって剥がれる網膜剥離を発症する場合があります。そこで裂孔の周囲をレーザー光線で焼き固めて塞ぎ、網膜剥離への進行を阻止します。
中心性漿液性脈絡網膜症
網膜の外側にある脈絡膜の血管から血液の成分が漏れ出して、網膜の中央にある黄斑部が局所的に網膜剥離を起こす病気です。基本的には自然に治癒する病気ですが、回復を早めたり再発を防ぐ目的で血液の成分が漏れ出している部分をレーザー光線で焼き固めて塞ぐ場合があります。ただし、その部分が黄斑部の中央にある中心窩(ちゅうしんか)に近い場合は、視力への影響を避けるためにレーザー光凝固術を行うことができません。これは、視力の良し悪しを司る黄斑部の中でも中心窩が最も高精細にものの色や形を識別することのできる部分だからです。
レーザー光凝固術の費用
レーザー光凝固術は健康保険適用となります。患者さんの目の状態により適応が違いますので、