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緑内障治療の目的と原則とは
1.治療の目的は患者さんの視機能維持
緑内障の進行によって傷害された視機能は、治療を行っても回復することはありません。治療の目的は、患者さんの視機能を維持する事となります。継続した治療や経過観察を行うことで、緑内障による視機能障害の進行を防ぎます。
2.確実な治療法は眼圧下降
現在、緑内障の治療方法として唯一確実な方法は、眼圧を下降させることです。
眼圧下降以外の治療方法としては、視神経乳頭の血流改善治療・視神経保護治療が実践されており、将来的には新しい治療法となる事が期待されております。
3.原因となる症状があれば治療を行う
眼圧を上昇させる原因が治療可能な症状であれば、眼圧下降治療と合わせて原因に対する治療が必要です。
- 瞳孔ブロックによる眼圧上昇
⇒ レーザー虹彩切開術 - ぶどう膜炎の炎症による緑内障
⇒ 消炎治療 - 血管新生緑内障
⇒ レーザー光凝固術 - ステロイド緑内障
⇒ ステロイド薬使用の停止
など
早期発見が重要
緑内障は、傷害された視機能が回復することがなく、病状がかなり進行するまで自覚症状がない疾患です。そのため、早期発見・治療するためには、定期的な検査を受ける必要があります。
必要最小限の薬剤で最大の効果を出す
緑内障の治療には、多数の治療薬が認可されておりますが、日本緑内障学会のガイドラインの原則としては、必要最小限の薬剤と副作用で最大限の効果を得るように使用するように決定しております。各治療薬の作用機序・副作用などを患者さんにも理解いただき、治療を行っていきます。
薬物・レーザー・手術から選択する
緑内障の治療は、薬物療法、レーザー治療、手術療法から選択します。患者さんの症状・緑内障の分類によって治療方法を決定します。一般的には、薬物治療を実施しても効果が得られない場合は、レーザー治療・手術治療を実施します。
実際の緑内障治療について
緑内障は慢性的に経過する症例がほとんどとなります。原発開放偶角緑内障(正常眼圧緑内障含む)、虹彩切開後の原発閉塞隅角緑内障、慢性続発緑内障などの実際の治療について記載します。
ベースラインデータの把握
治療前の状態をベースラインデータとしてしっかりと把握する必要があります。治療前の眼圧は、治療効果を判定する上で必要となります。また、治療前の視神経乳頭・視野の所見は治療方針の決定と治療法修正や変更を行う上で重要となります。
目標眼圧
目標眼圧設定
緑内障の治療は視機能の維持です。視神経障害の進行を防ぐ眼圧を事前に正確に知ることは難しいですが、治療を開始するに当たり、緑内障の病期、治療前の眼圧、余命や年齢、視野障害の進行、リスクファクター(角膜厚、家族歴、近視)などを考慮し、患者さんごとに目標眼圧を設定します。
目標眼圧の例としては、緑内障初期では19mmHg、中期16mmHg、末期14mmHg以下というように設定したり、ベースライン眼圧から20%下降や30%下降など下降幅を設定します。
目標眼圧の修正
目標眼圧を設定し、治療を開始してもある程度治療経過を確認しないと、その目標眼圧が適切な設定かどうか判断できません。目標眼圧を維持できていても、視神経障害の進行が阻止できない場合は、目標眼圧を見直す必要があります。目標眼圧は、絶対的なものではなく、定期的に評価して修正を行っていきます。
患者さんも参加した薬物治療の決定
緑内障の治療は、長期間の点眼治療・経過観察が必要で、患者さんも自覚症状がないので、治療を成功させるためには、患者さんの協力が必要不可欠です。患者さんにも治療方法の決定過程に参加していただき、その決定に従って治療を受けること(アドヒアランス)が必要になります。そのために、医師から患者さんには、①疾患・治療・副作用について十分に説明すること、②最小限の治療とすること、③患者さんのライフスタイルに合わせた治療を実施する事、④正しい点眼指導を実施するが大切と考えております。