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失明の原因となる病名・目の病気

失明の定義

失明の定義失明と聞くと、「完全に光を失った真っ暗闇な状態」を想像しがちですが、一般的には「社会生活が極めて困難な程度にまで視力が低下した状態」を指します。WHO(世界保健機構)の定義でも「視力が良いほうの眼の矯正視力が0.05未満」とされています。ただ、視力がどの程度からを「失明」とするかには諸説があって、眼科医などでは一般に矯正視力で0.02以下としていることが多いようです。

日本では失明に関する疫学的データがほとんどなく、厚生労働省の視覚障害者の認定数から失明の患者数や失明原因病の統計を取ってきました。障害等級認定では眼球摘出で視力を失ったもののほか、光の明暗を弁別できる視力(光覚弁)、目の前の掌の動きを弁別できる視力(手動弁)、指の本数を弁別できる距離を計る視力(指動弁)などから認定されます。

ただ、視覚障害で日常生活に困難を覚えている人は身体障害者手帳の交付を受けている人の5〜10倍はいるのではないかといわれており、日本眼科医会では独自にアメリカでの視覚障害の定義を用いて失明者数を分析しています。それによると、良いほうの眼の視力が0.1以下の場合を「社会的失明」とし、その患者数は18万8,000人ほどいるとされています。
ちなみに、失明とは病気や事故などによって視力を失った状態を指す言葉で、先天的に盲目である先天盲については失明という言葉は使いません。

日本における失明原因

人は環境情報の8割を視覚から得ています。視覚を失うことは日常生活を送る上でひじょうに大きな情報の欠落を意味しています。
失明の原因は海外と日本ではやや異なる傾向が見られます。まずは日本人の失明原因を見ていきましょう。

緑内障

日本人の失明原因の第一位を占めるといわれています。眼球の内側を満たしている房水の圧力が上昇することで徐々に視神経を圧迫し、視野がむしばまれて欠けていく病気です。視野の欠損は、発生場所も個々のケースで異なり、また、ランダムに広がります。進行速度が遅いことと、脳が視覚情報を補完して正常に見えているように認識してしまうため、初期段階では欠損に気づきにくいことがほとんどです。

緑内障には、房水の排出に難があって発症する開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障、発達緑内障などのほか、正常眼圧であっても視神経が眼圧抵抗に弱いために起こる正常眼圧緑内障、外傷や糖尿病などによって起こる続発緑内障などがあります。日本では40歳以上では20人に1人が緑内障であるといわれていて、なかでも正常眼圧緑内障が圧倒的に多くみられます。

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糖尿病網膜症

失明原因の第二位と言われています。糖尿病の合併症の代表的なものです。血糖値が高い状態が長く続くことで毛細血管に障害が生じ、網膜に出血を起こしたり、栄養や酸素の供給が滞ったりして、網膜剥離などを引き起こします。この病気も初期には自覚症状を感じにくいものです。

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網膜色素変性症

網膜色素変性症は遺伝性の疾患で、網膜にある視覚細胞(桿体細胞・錐体細胞)が失われていきます。進行は非常に緩やかで、数十年単位で推移します。暗いところでものが見えづらくなる夜盲や、視野狭窄、極端な視力低下、白内障などを経て視力を失っていきます。

加齢黄斑変性症

網膜はすべての部分ではっきりと視覚をとらえているわけではありません。視覚の中心は眼に入ってきた光が最短距離で到達する網膜の中心部、黄斑です。加齢によって黄斑がダメージを受けるのが加齢黄斑変性です。黄斑の組織が萎縮してくる萎縮型と、網膜の裏にできた脆い新生血管(異常血管)から出血などが起きて黄斑にダメージを与える滲出型の2種類があります。
アメリカでは加齢黄斑変性が失明原因の第一位です。ヨーロッパでも上位を占めています。

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高度近視

これは病的近視ともいい、眼球が前後方向に長く伸びてしまったことで網膜にピントが合わず、眼鏡などによる矯正もできない状態をいいます。眼底の網膜や脈絡膜に負荷がかかって薄くなってしまったり、剥がれてしまったりして視力が失われていきます。

網膜剥離

眼球を球形に支えている硝子体が、加齢とともに萎縮して網膜を引っ張ることで網膜に孔が空き、そこから水が入って網膜が剥がれてしまうのが網膜剥離です。その他、頭部や眼球への衝撃など、糖尿病網膜症などの病気が原因で発症する場合もあります。

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その他

日本人の失明原因を示しておきましょう(2007年 厚生労働省研究班報告書)。
1位 緑内障 20.9%
2位 糖尿病網膜症 19.0%
3位 網膜色素変性 13.5%
4位 加齢黄斑変性 9.3%
5位 視神経萎縮・脈絡膜萎縮 8.6%
6位 高度近視 7.8%
7位 角膜疾患 3.4%
8位 白内障 3.2%
9位 その他 14.3%

世界における失明原因

世界的に見ると、失明の原因で上位を占めるのが加齢黄斑変性白内障です。
加齢黄斑変性については、高齢化が進むなかで今後日本でも失明原因のトップになると予想されています。

白内障

水晶体が濁ることで視力が低下します。
白内障の治療は水晶体に代わる眼内レンズを埋め込む方法が広く行われています。日本では健康保険が適用されるため比較的安価に白内障手術を受けることができますが、海外諸国では欧米の貧困層を含めて高額なレンズ費用を賄うことができず、白内障手術を受けられないという現状があります。途上国などでは白内障よりも命に関わる感染症対策が優先されます。そのため、白内障が失明原因のトップもしくは上位にランクしています。
ただ、疫学調査では日本でも白内障が失明原因の第一位です。白内障は加齢によって進むことがほとんどです。「年を取れば仕方がない」と諦めず、積極的に治療を受ける必要があります。

白内障について詳しくは >>

失明の予防

日本人の失明率は0.14%で先進欧米諸国と比較してもほぼ半分、世界でもっとも低い国とされています。とはいえ、失明原因の上位を占める緑内障も白内障も糖尿病網膜症も、けっして稀な病気というわけではありません。健康診断・眼科検診などによって早期にその兆候をとらえることができるようになってきました。早期発見し治療をはじめることで、視力の低下を抑制し失明に至ることを防ぐことが大事です。

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